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「今日は賑やかだったね」 「うん、ま、ね」 ある日のBarは珍しく ( マスターごめんよ ) 大入りだった。後ろのテーブルにまで若いカップルが陣取っている。・・・数時間後、あんなに賑やかだったお客が一人二人と帰っていき、とうとうマスターと二人きりになっちゃった。 「久々に後ろのテーブルにも客が入ったし・・・」 「あの男の方、このあいだ来たばかりの人なんだ」 「ふーん、それじゃリピーターってとこか」 「それがさぁ・・・」 マスターはそのお兄さんがお気に召さなかったらしい。 -------------------------------------------------------------------------------- 喫茶店のマスターなど長い間やっていると顔・姿・形を見ただけで、その人がどんな性格か判るよ、と言っていた人がいた。そこからいくとBarは酒を供するところ故、喫茶店よりも一段と深い人間観察とやらが出来ることでしょうな、さぞや。 で、今回はそんな深ーい人間観察に基づくお話ではなく、実に薄っぺらな好きか嫌いかってお話。 -------------------------------------------------------------------------------- 若いカップルがBarに来ると見ていても面白いんだな、これが。二人は必ずカクテルを注文する。それも全て違うカクテルを数種類。別にカクテル通だとは思えないんだけど、そうなのね、大体。ここのマスターに言わせると、あのての男はほとんど本物のカクテルってものを知らないらしい。某CMのカクテルバーで瓶入りのカクテルの名前を覚えて、居酒屋で ( あるいはカラオケBOXで ) ペットボトルから注いで薄めたカクテルの味しか知らないんだとサ。( マスターの言 ) 「脳天から注ぐ、カルーアちゃんなんていうのだよ!」 ( マスター語る ) なるほと゜なるほど、さっきの後ろのテーブルのカップルもそのてのものか、はてさて。 マスターは、最近の若い男たちの知ったかぶりが許せないらしい。 まぁ、オイラやマスター自身の時代も知ったかぶりのアンチャンたちは多かったんだろうけれど、マスターの話を聞いているとうなずいてしまう側面もあるのよね、これが。 今の時代は、とにかく情報化時代だよね。様々な情報が溢れている。その気さえあれば、ネットからでも雑誌からでも実にいろんな情報 を ( カルトなものまでも ) 手に入れることが出来る。だからその弊害かどうか知らないが、複数の訳知りの人たちに聞いてみて、その情報の大元をたどってみると、結局は情報ソースが同じだったりするという実に貧困でばかばかしい結果に遭遇することがよくある。 ま、昔からこの傾向はあるけどね。『 HOW TO SEX 』 を熟読してはじめてのコトに望むチェリーボーイから、ポパイやブルータスなんて雑誌で特集されたコースどおりにデートをもっていく奴とか・・・。 まえに、寿司屋の板さんが言っていた。 カップルでカウンターに座ったとたん、大声でお寿司の蘊蓄を彼女に始めて、「寿司は何ていっても玉からじゃないと・・・云々」 こういう若い男は、板さんたちが一番嫌う客だって。Barのマスターも同じで、実際そう詳しくもないのに、連れの女性にカクテルの蘊蓄を語る男。ここのマスターも嫌いなんだよね、このての人。 「知らないものは知らないでいいのに、知ったかぶりするんだよね」 「さっきの彼もさ、今日の彼女にカクテル選んで、蘊蓄語ってたでしょ」 「うん、そうだね」 「実は、ここに最初に来たときも、別な女だったけど同じカクテルを飲ませて語ってたんだよ、カクテルというものを」 「うへっ」 格好の付け方も最近は単純で貧困。“見栄”という男のスタイルも、今では失われてしまったのかね。え? 彼がオーダーしたそのカクテル何だったのかって? ・・・・・・ナイショ。 だってさ、ワルイじゃない彼に。 もし、あなたがとなりでそのカクテルをオーダーする女連れの若い男を見たら、疑っちゃうでしょ、だ・か・ら。
by flatlies
| 2004-06-16 08:06
| 今夜もBarで
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